個人事業主として開業したり、会社を設立したりすると、「どの住所を使えばいいのか」で迷うことがあります。開業届や納税地、法人の本店所在地、取引先に見せる事業用住所は、それぞれ役割が異なるためです。
とくに自宅住所を公開したくない場合は、「自宅以外の住所を用意すればすべて解決する」と考えず、何に使う住所なのかを分けて確認しましょう。
本記事では、個人事業主と法人で使う住所を整理し、自宅住所を使いたくない場合の選択肢まで解説します。
編集長住所の問題は、最初に「どこへ提出する住所なのか」「誰に見える住所なのか」を分けると整理しておくことが大切です。
- 開業届と納税地で確認する住所
- 法人の本店所在地と代表者住所の違い
- Webサイトや請求書など外部へ見せる住所の考え方
- 自宅住所を使いたくない場合の事業用住所の選択肢
開業・法人の住所は「何に使う住所か」で分けて考える


開業時に扱う住所は、すべて同じ役割ではありません。個人事業主なら開業届や納税地1、法人なら本店所在地2や代表者住所など、手続きによって確認する住所が変わります。
さらに、Webサイトや請求書などで取引先に示す住所は、税務や登記で使う住所とは目的が異なります。
自宅住所をどこまで使いたくないのか考えるためにも、まずは用途を整理しておきましょう。
| 住所の用途 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 開業時の税務手続き | 開業届に納税地などを記載 | 法人設立届出書などに本店所在地等を記載 |
| 税務上の住所 | 原則として住所地。一定の場合は事業所等を選択可能 | 原則として本店または主たる事務所の所在地 |
| 法人登記 | 原則不要 | 本店所在地を登記 |
| 代表者個人の住所 | 法人登記上の代表者住所はない | 代表取締役等の住所が登記事項になる |
| 顧客・取引先へ示す住所 | Webサイト、請求書、ネットショップなど | Webサイト、請求書、取引先との書類など |
国税庁は、国内の個人事業者の納税地について住所地または居所地を基本とし、別に事務所等があり、その所在地を納税地として届け出た場合は事務所等の所在地になると示しています。
参考:納税地について|国税庁
法人では、本店または主たる事務所の所在地が納税地です。
たとえば、自宅で仕事をする個人事業主でも、税務上の住所、事業用Webサイトに掲載する住所、ネットショップで購入者に示す住所をすべて同じにするとは限りません。
法人の場合も、本店所在地と代表取締役等の住所は別に考える必要があります。「会社の住所を自宅以外にすれば、代表者個人の住所も出なくなる」と単純には考えられません。
自宅住所を守りたい場合は、最初から「住所を隠せるか」だけを見るのではなく、どの手続き・場面で住所が必要になるのかを一つずつ確認しましょう。



住所を「税務用」「登記用」「外部表示用」のように分けると、自宅住所を使う場面と、別の住所を検討できる場面を整理できます。
個人事業主が開業するときに確認する住所


個人事業主は、「開業届へ記載する住所」「税務上の納税地」「Webサイトや請求書などで外部に示す住所」を分けて確認しましょう。
とくに自宅で仕事を始める場合は、税務署へ届け出る住所と、顧客や取引先に見せる住所を同じものとして考えないことがポイントです。
開業届に書く住所
個人事業主が開業届を出す際は、納税地など必要な情報を記載します。
ここで注意したいのは、「開業届には必ず自宅住所だけを書く」と一律に考えないことです。一方で、好きな住所を自由に選べるわけでもありません。納税地には税法上のルールがあります。
自宅とは別の住所を事業に使いたい場合は、何の住所として利用するのかを先に確認しましょう。
バーチャルオフィスを開業時の住所として検討している方は、バーチャルオフィスは開業届に使える?自宅住所を出したくない個人事業主向けに解説も参考にしてみてください。
納税地として使う住所


個人事業主の納税地は、原則として住所地です。国内に住所がなく居所がある場合は、居所地が納税地になります。
住所や居所とは別に事業所などがある人は、その所在地を納税地として選ぶこともできます。
国税庁も「国内に住所又は居所のいずれかがあり、かつ事業所などがある人は、住所地等に代えてその事業所などの所在地を納税地にすることができます」と示しています。
そのため、自宅とは別に事業用住所を用意したとしても、その住所が自動的に納税地になるわけではありません。
バーチャルオフィスを納税地として検討している場合は、個人事業主はバーチャルオフィスを納税地にできる?で条件や注意点をチェックしてみてください。
Webサイトや請求書など外部に出す住所
開業届や納税地とは別に考えたいのが、Webサイトや請求書などを通じて顧客・取引先に示す住所です。
たとえば、自宅を納税地としていても、事業用Webサイトへ必ず同じ住所を掲載するとは限りません。請求書でも、事業者情報や連絡先として住所を記載する場合があります。
一方、ネットショップの特定商取引法に基づく表示など、法律や利用するサービスのルールによって住所表示が必要になる場面もあります。
自宅住所を公開したくない場合は、「税務署へ届け出る住所」と「顧客や取引先から見える住所」を分け、それぞれのルールを確認しておきましょう。



税務上は自宅住所を使いながら、外部へ表示する事業用住所について別の対策を考えることもできます。
法人を設立するときに確認する住所


法人を設立する場合は、個人事業主より住所の役割が増えます。とくに確認したいのが「本店所在地」「代表取締役等の住所」「銀行口座などの手続きで使う住所」です。
本店所在地を自宅以外にしても、代表者個人の住所まで同じ扱いになるわけではありません。
本店所在地は会社の住所として登記する
法人を設立する場合は、会社の住所となる本店所在地を決めて登記します。
法務局は、会社を設立した場合について、本店所在地を管轄する登記所へ登記申請を行うと説明しています。
自宅を本店所在地にする方法のほか、事務所を借りたり、法人登記に対応したバーチャルオフィスを利用したりする方法もあります。
ただし、賃貸住宅やマンションを使う場合は、登記手続きだけで判断しないほうがよいでしょう。賃貸借契約や管理規約で事業利用が制限されているケースがあるためです。
国土交通省が管理規約のひな型として示すマンション標準管理規約にも、専有部分を住宅として使用し、他の用途に供さないとする規定例があります。
実際のルールは物件ごとに異なるため、契約書や管理規約を確認してみてください。
代表取締役の住所は本店所在地とは別に考える


株式会社では、本店所在地とは別に、代表取締役等の住所も登記に関係します。
そのため、本店所在地をバーチャルオフィスなど自宅以外の場所にしても、代表者個人の住所まで自動的に非公開になるわけではありません。
現在は、一定の要件を満たす株式会社について「代表取締役等住所非表示措置3」を利用できます。
代表取締役等住所非表示措置は、代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書などに表示しない制度です。
措置を利用した場合、登記事項証明書等に表示される住所は市区町村までとなります。
ただし、住所を登記する義務そのものがなくなる制度ではありません。住所変更時には登記申請が必要で、申請書にも住所を記載します。
詳しい要件や注意点は、代表取締役の住所は非公開にできる?住所非表示措置を解説も参考にしてみてください。
法人口座を作るなら住所だけで判断しない
バーチャルオフィスを本店所在地にしているからといって、それだけで法人口座を開設できないとは限りません。
たとえばGMOあおぞらネット銀行は、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを法人の登記住所としている場合でも、法人口座を開設できると案内しています。
ただし、登録した法人住所宛てに送られる転送不要の簡易書留を受け取れることが条件です。
また、同銀行は事業内容の具体性や客観性を確認しており、Webサイト・契約書・請求書などの提出を求める場合があります。住所だけで審査結果が決まるわけではありません。
法人設立時の住所は、「登記できるか」だけでなく、郵便物の受け取りや将来利用したい金融機関の条件まで見て決めるとよいでしょう。
詳しくは、バーチャルオフィスでも法人口座は作れる?審査のポイントを解説で紹介しています。



法人用の住所は、登記だけでなく郵便物や法人口座の手続きまで見据えて決めると、あとから住所を見直す手間を省けます。
自宅住所を使いたくない場合は事業用住所を準備する方法もある


開業や法人設立で自宅住所を使いたくない場合は、事業用の住所を別に用意する方法があります。その一つが、住所利用を中心としたバーチャルオフィスです。
ただし、「自宅住所を出したくない」という理由だけで契約先を決めるのは避けましょう。必要な機能は、住所を何に使うのかによって変わります。
申し込み前には、次の順番で確認してみてください。
- 何の住所として使いたいのか
- その用途に対応したプランか
- 郵便物を受け取る必要があるか
- 将来、法人登記する可能性があるか
Webサイトなどに載せる事業用住所だけが必要な人と、法人登記や郵便物転送まで利用したい人では、適したプランが異なります。
また、バーチャルオフィスで借りた住所を、開業届・納税地・法人登記・銀行手続きなどで同じように利用できるとは限りません。
サービス側の利用条件だけでなく、制度や提出先のルールも確認しましょう。
おすすめバーチャルオフィス比較表



おすすめのバーチャルオフィスを一覧表にまとめました。
バーチャルオフィスは料金プランのほか、郵便物転送の頻度や法人登記の可否で迷うことがあります。
まだ候補が定まっていない段階では、自分の事業スタイルにマッチするのか、しっかり比較検討しましょう。
※下記のサービス名をクリックすると、紹介記事へ移動します。
| サービス | 月額料金 | 法人登記 | 郵便物転送 | 電話転送 | 電話秘書代行 | FAX | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
GMOオフィスサポート | 660円〜 | ※転送ありプラン | ※月1・隔週・週1転送プラン | 料金を抑えて事業用住所を用意したい人 | |||
DMMバーチャルオフィス | 660円〜 | ※ベーシックプラン | ※週1回 ミニマムは受取対象に制限あり | ※固定電話セットは 新規受付終了 | ※AI秘書オプション | 低コストで住所を使いたい人 | |
レゾナンス | 990円〜 | ※月1・週1回、写真通知あり | ※オプション | ※オプション | ※オプション | 法人登記や都心住所を低コストで使いたい人 | |
NAWABARI | 1,100円〜 | ※ビジネスプラン | ※週1回、写真確認あり | ※オプション | ※オプション | ※オプション | ネットショップ・複数屋号・プレゼント受取などに使いたい人 |
ワンストップビジネスセンター | 5,280円〜 | ※全プラン | ※全プラン週1回転送込み | ※ビジネスプラン以上 | ※プレミアムプラン | ※ビジネスプラン以上 | 郵便物転送・会議室・電話対応まで考えたい人 |
※料金・対応プラン・オプション内容は変更される場合があります。申し込み前に、各サービスの料金プランと利用条件を確認してください。
※郵便物転送の送料・手数料込みは、各社の条件内での対応です。サイズや重量、スポット転送、宅配物などは別料金になる場合があります。
6つの質問に答えると、重視する条件に合いやすいサービスを5社から判定します。
※診断結果は、各社の公開情報をもとにした選択の目安です。料金・対応サービス・キャンペーン等は変更される場合があるため、申し込み前に各サービスの案内で最新情報をご確認ください。
開業前に住所を決める順番


開業や法人設立の住所は、先にバーチャルオフィスを探すのではなく、「どこで、何のために住所を使うのか」を整理してから決めると迷いにくくなります。
確認する順番は次の4つです。
- 自宅住所をどこまで外部に出したくないか決める
- 開業届・納税地・法人登記など必要な用途を確認する
- 郵便物を受け取る必要があるか確認する
- 将来法人化する可能性まで考える
たとえば、Webサイトに自宅住所を載せたくないだけなら、法人登記まで対応したプランが必須とは限りません。
一方、近いうちに法人化する予定がある場合は、登記や郵便物の受け取りまで見据えて住所を選ぶことで、法人化に伴う住所変更を減らせる可能性があります。
まずは「住所を借りるかどうか」ではなく、「どの用途で自宅住所を使いたくないのか」から整理してみましょう。



住所を決める前に将来の法人化や郵便物まで確認しておくと、必要以上の機能を契約したり、あとから住所を変更したりするリスクを減らせます。
開業・法人の住所についてよくある質問
- 開業届に書いた自宅住所は一般に公開されますか?
-
開業届に記載した自宅住所が、法人登記のように誰でも確認できる形で一般公開される仕組みではありません。
国税庁の申告書等閲覧サービスも、納税者本人などが過去の申告・届出内容を確認するための制度です。第三者からの申告内容の問い合わせに回答する目的では利用できません。
ただし、開業後はWebサイトや請求書、ネットショップの特商法表記など、別の場面で住所を示す必要が生じることがあります。
- 開業届の住所と納税地は同じにする必要がありますか?
-
住所地と納税地が必ず同じになるとは限りません。
個人の納税地は原則として住所地ですが、別に事業所などがある場合、その所在地を納税地として選ぶこともできます。
自宅以外に事業所を持っている場合は、どの住所を納税地とするのかを確認してから手続きを進めましょう。
- 法人の本店所在地に自宅を使えますか?
-
自宅を本店所在地として登記する場合は、賃貸借契約やマンションの管理規約まで確認しておきましょう。
マンション標準管理規約はあくまでひな型ですが、住戸を住宅以外の用途に使わないとする規定例があります。実際の利用条件は物件によって異なります。
- 代表取締役等住所非表示措置を使えば本店所在地も隠せますか?
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いいえ。本店所在地を非表示にする制度ではありません。
対象となるのは、一定の要件を満たした株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人の住所の一部です。会社の本店所在地とは別に考える必要があります。
- バーチャルオフィスを使えば自宅住所を一切書かずに済みますか?
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いいえ。バーチャルオフィスを契約しても、自宅住所をすべての手続きで使わずに済むとは限りません。
開業届・納税地・法人登記・銀行口座などで住所をどのように扱うかは、それぞれ確認が必要です。また、バーチャルオフィスの契約時には、本人確認のために自宅住所などの提出を求められる場合があります。
大切なのは自宅住所を完全になくすことではなく、「どこで外部に見える可能性があるのか」を確認し、必要な場面だけ対策することです。
開業・法人の住所は用途を分けて決めよう
開業や法人設立で使う住所は、すべて同じ役割ではありません。
個人事業主なら開業届や納税地、法人なら本店所在地や代表取締役等の住所をそれぞれ確認する必要があります。Webサイトやネットショップなどで顧客に示す住所については、税務や登記とは別に考えましょう。
自宅住所を公開したくない場合は、まず「どの場面で自宅住所を使いたくないのか」を整理してみてください。そのうえで必要なら、バーチャルオフィスなどの事業用住所を検討してみてください。
住所利用だけでよいのか、郵便物の受け取りや法人登記まで必要なのかによって、選ぶサービスやプランも変わります。開業後の使い方まで想定して住所を決めましょう。



住所を一つにまとめて考えず、「税務」「登記」「外部公開」の3つに分けると、自宅住所を守るために必要な対策が見えてきます。
事業用住所を決めたあとに必要な作業は、税務関係だけではありません。事業住所変更後のやること20項目を使うと、登記やWebサイト、請求書、郵便物などを順番に確認できます。
脚注・用語解説









